皆さま、こんにちは。satoie(竹田建設株式会社)の竹田瞳です。
3月4~6日の3日間にわたり開催された、パッシブハウスジャパン全国大会に姉と二人で参加してきました。全国大会は今回が初めての参加です!
1日目のオプショナルツアーで黒部視察に参加し、2日目は東京で行われたメインフォーラムに出席しました。
1日目:黒部パッシブタウン視察ツアー
1日目は富山県黒部市でのパッシブタウン視察ツアー。
黒部パッシブタウンと、I-TOWNの視察です。
黒部パッシブタウン

初めに視察したのは黒部パッシブタウン。
YKKグループが黒部市で進めている街づくりプロジェクトで、パッシブハウスの思想を取り入れた持続可能な街区開発が特徴です。
現在は1~5街区まで整備されていて、それぞれに異なるテーマや設計者の思想が込められています。
- 1街区:最初期の街区。地域とのつながりを意識した配置
- 2街区:集合住宅としての性能向上を図った街区
- 3街区:既存RC造の集合住宅を高性能化した街区
- 4街区:非住宅用途も含む複合的な街区
- 5街区:中高層木造を目指した最新街区
今回はこのうちの、3街区と5街区を中心に視察しました。
5街区
最初に案内してくださったのは、5街区の設計をしたオーストリアの建築家、ヘルマン・カウフマン氏。木造建築の分野で世界的に活躍されている方です。
5街区は7階建ての中高層共同住宅で、「木材を最大限に使って建てること」「建築時のCO2排出を減らすこと」を大きなテーマに設計されたとのことでした。

使用した木材は全て国産材で、そのほとんどが富山県産材。
一部、構造材として使用したカラマツなどは近隣県のものを使ったそうです。
地産地消を徹底し、輸送によるCO2排出も抑えるという考え方が随所に感じられました。
構造は、1階の基礎と基礎と中央のコア部分(階段などの共用部)をコンクリートで、その上に木の柱を立て、外壁パネルと窓を取り付けます。
さらにその上にプレキャストコンクリート梁を架け、木とコンクリートの合成床を施工し、またその上に木の柱を立てるーー。
木とコンクリートを積層させながら高さをつくる、独特のハイブリッド構造でした。
外壁は木材仕上げで、薬剤注入処理を施した木材に溝加工を加え、耐久性と美しさを両立。
「長く美しく使える木の外壁」を実現するための工夫が細部にまで施されていました。
また、木造の大敵は「水」。
建築時に雨に濡れるリスクを最小限にするため、工場で事前にパネルを組み立て、防水シートで養生し、短期間で組み上げるプレファブ化を徹底していたとのこと。
木造を守りながら工期を短縮する、合理的で丁寧な建て方だと感じました。
敷地内には水素ステーションもあり、夏の余剰エネルギーを水素といて貯蔵し、冬に利用する仕組みも見学。
町全体でエネルギーを循環させる取り組みはとても先進的でした。
3街区
続いて訪れた3街区は、既存RC造の集合住宅を高性能化した街区です。
森みわ代表理事による設計で、森さんご本人に案内していただきました。
ここでは、既存建物を活かしながら性能を引き上げるための工夫が随所に見られました。

森さんが最初に話されていた「北面を美しくつくる」という考え方がとても印象的でした。
パッシブタウンでは南面を日射取得のために大きく開くため、他の棟からは常に北面が見えることになります。
だからこそ、北面に木を多く使い、やさしい表情に仕上げているとのこと。
建物単体ではなく、街全体の景観をどうつくるかという視点に深く共感しました。
内部では、森さんオリジナルの階段手すりや牛乳受け、地域の家具職人による造作家具など、細部に温かさが宿っていました。
コストを抑える工夫を徹底し、その分を地域の職人さんの家具に充てるという考え方も素敵で、地域と建物が自然につながっている印象を受けました。

また、既存ベランダの熱橋対策については、一度ベランダを撤去し、新たに熱橋対策を施した形で再構築したとのこと。
解析と検討を重ねながら、既存建物の弱点を丁寧に補っていく姿勢が伝わってきました。
3街区は2棟あり、一つはパッシブハウス認定、もう一つはLEED認定を取得。
既存建物でもここまで性能を引き上げられるのだと、実例としてとても勉強になりました。
I-TOWN

視察ツアーの最後に訪れたI-TOWNは、150戸の高性能木造社員寮。
設計をされた竹内理事が案内してくださいました。
ここでは、集合住宅の新しいあり方を強く感じました。
I-TOWNはもともと道のなかった場所に街区計画から始まったプロジェクト。
各住戸の近くに駐車場をつくらず、共用部の近くに駐車スペースをまとめることで、敷地内のランドスケープを豊かにし、車が前面に出ない落ち着いた街並みを実現。
必要な時は共用車を住民で使う仕組みにすることで、駐車場に取られる面積を最小限に抑えています。
I-TOWNの象徴ともいえるのが、開けたアーケードと中庭。
近所の子供たちも通り抜けられるように設計されており、地域に開かれた集合住宅という印象を受けました。
センターハウスには厨房・食堂・入浴施設が備わり、住民の生活を支える役割を果たしています。
給湯には富山県の間伐材を使った木質チップのバイオマスボイラーを採用し、地域資源を活かしながら環境負荷を抑える仕組みが整っていました。


外観は撮影NGでしたが、木を取り入れたファサードと、建物の間をつなぐ緑の配置がとても素敵で、歩いていて気持ちの良い場所でした。
アーケードや軒下のベンチなどもあり、心地よい空間づくりがされているなと感じました。
夜は参加者の方々と
視察後は黒部から東京へ移動し、ホテルが近いメンバーで夕食へ。
九州支部リーダーのタナカホーム・田中社長や、東北支部リーダーの菊池さんとも同席させていただき、会社としてどのように取り組みを進めているのか、現場の体制づくりなど実践的なお話をたくさん伺いました。
皆さんの行動力や、地域を超えて学び続ける姿勢に触れ、身が引き締まる思いでした。
2日目:メインフォーラム

2日目は東京で開催された全国大会のメインフォーラムに参加しました。
会場には全国の工務店さんや専門家の方々が集まり、熱気のある雰囲気です。
オンラインの勉強会でお名前を見ていた方々にも直接お会いできて、緊張しつつも嬉しい時間でした。
新任理事発表

前日にご一緒した田中さん、中国支部リーダーでモデルハウスのコンサルでもお世話になっている福本さんが新理事に就任されました。
驚きとともに、とても嬉しい気持ちに!おめでとうございます!
リノベーション事例の講演


大阪の中川忠工務店の中川さん、野澤工務店の野澤さんによる講演では、実家を残したいという施主の想いから始まったパッシブハウスリノベーションの事例が紹介されました。
日照条件や既存構造の制約、断熱ラインの取り方、窓の性能と配置、換気計画など、課題と向き合いながら性能を引き上げていくプロセスはとても参考になりました。
中古住宅や空き家が増えるこれからの時代に、リノベーションでの高性能化はますます重要になりそうです。
森代表理事の講演
森みわ代表理事からは、日本のパッシブハウスの現状についてデータを交えて説明がありました。

日本のパッシブハウスの床面積はアジアの1.6%ほどで、集合住宅は床面積が大きいためパッシブハウス化しやすいとのこと。
ただし、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)補助金の申請タイミングなどで解析が進まず、認定に至らなかった事例もあるという課題も紹介されました。
前日の視察と重なり、集合住宅での取り組みの重要性を改めて感じました。
ヘルマン・カウフマン氏の講演

ヘルマン・カウフマン氏からは、木造大型建築の取り組みについての講演がありました。
前日に伺った5街区の話をさらに深める内容でした。
国産材、とくに富山県産材を最大限に使った理由。中高層木造への挑戦。プレファブ化による品質確保と工期短縮など、詳しく語られました。
最後に話されていた「WELCOME TO WOODAGE」。
concrete ageからwood ageへ、という木を使う建築への強い思いが伝わってきました。
ベアトホルト・カウフマン氏の講演
ドイツのパッシブハウス研究所のベアトホルト・カウフマン氏からは、樹脂窓サッシの進化、3街区のベランダ熱橋対策、換気の考え方、冷暖房の運転方法によるCOPの違いなど、技術的な内容が紹介されました。

特に、冷暖房を一日中付けたままにするほうが一次エネルギー消費量では優位になるという話は興味深く、住まいの考え方にも影響する内容でした。
パネルディスカッションと退任理事の挨拶

続くパネルディスカッションでは、集合住宅の高性能化について、カウフマン氏お二人と理事の方々が意見を交わされました。
日本の大工さんの技術の高さについての話題もあり、「子供たちが憧れる職業にしたい」との言葉がとても印象に残りました。

最後に、高岡理事と高橋理事から退任のご挨拶がありました。
モデルハウス建築で大変お世話になったアーキテクト工房Pureの高岡理事と、勉強会で多くの知識を共有してくださった高橋理事。
これまで本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします!
2日間を終えて
懇親会には参加できませんでしたが、視察・講演・交流と、学びの多い2日間でした。
黒部で見た街づくりの形、全国の方々から伺った言葉、そして講演で得た知識。
視察と講演で得た気づきが重なり、これからの家づくりを考える上で大きなヒントになる時間でした。
今回の学びを、これからの家づくりや発信の中で少しずつ形にしていければと思います。
